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新作執筆中! [戯曲]

先日、座・劇列車の稽古納めでした。

現在は来年度の公演作品について選定作業が行われています。

私の新作も候補の1つなんですが、今回は執筆が遅れていて1月の最初の稽古まで時間をもらっています。というわけで、目下よもやよもやの全集中で執筆中。

一応、劇団の座付作家ということになっていますが、これまでも私の作品を優先して上演してもらったことはありません。必ずコンペという形で他の候補作品と比べて決めてもらっています。別に自作に自信があるわけではありません。でも、座付作家の作品には台本使用料がいらないとか改作が自由だとか様々なメリットがあります。アドバンテージがないと既成の作品にはとても勝てません。

劇団の恩師西田了先生は「地元四街道を舞台にした作品を書きなさい」とよくおっしゃっていました。
四街道は東京のベッドタウンという側面を持っています。「四街道で生まれた子たちが故郷だと実感できるような作品」というのが先生の注文でした。

私の最初の作品『クロスロード~運命をつなぐ四つ辻』は、「四街道」というの地名と元になった四街道十字路が舞台です。上演の数年前、台風などで倒れると危険だということで十字路のシンボルだった榎(えのき)の大木が伐られてしまっていました。その榎の木陰は江戸時代から街道を行き交う人々の憩いの場でした。筋向かいには井戸には井戸があり、旅人の渇いた喉を潤したそうです。その井戸の跡にも1年ほど前に消防の施設が建てられ塞がれてしまいました。

正岡子規が新聞記者だったときに開設間もない総武本線に乗車して、沿線の駅で俳句を詠んだことは知られています。四街道駅でも「棒杭や四ツ街道の冬木立」という句を残しています。子規が地名の由来と言われるこの四つ辻を訪れて、街道の標識である棒杭と冬枯れした榎の大木を題材に詠んだ句のようです。

『クロスロード』は幕末、終戦の年、現代を3つの時代を舞台に、四つ辻でつながった人々の運命について書きました。もちろんまったくのフィクションですが、佐倉藩主堀田正睦が関わった日米修好通商条約、千葉空襲などを背景に懸命に生きる普通の人々の姿を描いたつもりです。お陰様で多くの皆さんに喜んでいただきました。四街道に住んでいても地名の由来となった四つ辻を知らない方も多く、この芝居を観てから初めて四つ辻を訪れた方もいらしたようです。榎の大木はもうありませんが、その代わりに植えられた若木が今ではかなり成長しています。先日テレビ東京の旅番組にもちょっとだけ登場しました。興味のある方は台本を下記の場所に上げてありますので、「脚本を読みたい!」→「作者名」→「高平九」で検索して読んでみてください。

脚本登録&公開サイト「はりこのトラの穴」
https://haritora.net/

さて、新作はこれから稽古始め1月7日までの間にどんな作品になるか私にもわかりません。でもやはり地元に関係のある作品です。四街道の人が地元を知り、地元を愛してくれることを祈って書いています。

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『やまんば おゆき』公演御礼 [戯曲]

四街道市民劇団 座・劇列車 第31公演『やまんば おゆき』が無事終演いたしました。

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一昨年、30周年には『やまんば おゆき』をやろうという話になりました。まだ劇団になる前、四街道市民の皆さんが上演した作品です。

脚本と演出は、劇団あすなろを主宰していらした西田了先生でした。

早速、30年前の初演に参加した劇団員に当時の台本を借りて読んでみました。朗読を多くの人が代わる代わる担当して、その間にちょっとした芝居をする。時には木になったり石になったりすることもあったそうです。基本は朗読劇でした。西田先生らしいとても面白い台本でした。

今回は本格的なお芝居にしようということになり私が脚本を担当することになりました。

原作(浜野卓也 作・箕田源二郎 絵)の童話を購入してみました。読んでみると美しい自然描写がたくさんありました。村の生活や人々の生き様も鮮やかに描写され表現されていました。

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私は取り憑かれたように台本を書き上げました。朗読ではなく普通のお芝居にするのが私の使命でしたが、どうしても原作と西田台本にある「語り」だけは削ることができませんでした。作品の時間が川の流れのように、うねりながら溢れながら枯れながら流れてゆく様を表現するのには「語り」が必要でした。

主な舞台は遠州です。まさに天竜川の流れのように重要な登場人物の死さえも易々と押し流して時間は流れていきます。「語り」の役割は重要でした。

でも、流れの行き着く先はわかりません。それもまた作品の魅力だと思いました。客席に投げられた大久保の最後のセリフは、観客の心にも新しい流れを生みます。観客の皆さんは与えられた流れとご自身の時間の流れを重ねることになります。その設定が私のいちばんのお気に入りです。

「語り」に話を戻しましょう。書いた当初は「語り」は1人にしました。お客様を楽しませるには複数人でやった方がいいかなとも考えました。頭に浮かんだのはかしまし娘やキャンディーズのような3人娘でした。でも、朗読の流れを切りたくなかったので結局1人にしました。本を持って落ち着いて語ってもらおうと思いました。

しかし、台本を演出の先生方に見せたところ、最初に指摘されたのは「語り」のことでした。「語り」は複数人でやった方がいいと助言されたのです。それも本を持たずに暗記してやった方がいいということでした。私は迷いました。役者への負担もありますが、せっかくの朗読が切られてしまうことを危惧したのです。ですがこれは私のまったくの杞憂でした。桜桃梅は苦労しながらもしっかりセリフを覚えてくれたました。それに美しい描写もまた3人が連携して流れるように語ってくれました。劇列車のキャンディーズのファンになった方は多いと思います。

もう一つ助言されたのは歌でした。オリジナルには歌が2曲すでにありました。作品の主題歌とも言えるおゆきの子守歌、そしてヒヨドリの歌です。その他にトチの実団子の作り方やコギノ織りを歌にしたらどうかという提案でした。私は詩も書きますが歌詞は大の苦手です。悩みましたがトチの実団子を作る工程やコギノ織りを織る人の思いを考えながら書いてみたら、意外にすんなりと書くことができました。出演者の一人でもある古葉重而氏が曲を付けてくださったので素晴らしい歌になりました。やまんばキャンディーズ、もとい桜桃梅が溌剌とした歌とダンスのパフォーマンスで盛り上げてくれました。

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それ以外にも細かな助言をいただき上演台本ができあがりました。私にとってはとても貴重な経験になりました。演出の先生方には感謝しております。

私はすでに来年の公演に向けて脚本を書いています。コンペですので採用されるかどうかわかりませんが、「いつも傑作とは限らないからね」という西田先生のお言葉を思い出しながら書き上げようと思います。よろしければ来年も座・劇列車公演をよろしくお願いいたします。

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