SSブログ

佐々木康『悔いなしカチンコ人生』を読む [読書]

佐々木康『悔いなしカチンコ人生』(けやき出版)を読みました。
この本はずっと読みたいと思いながら、なぜか読む機会を逸していました。今回、読もうと思ったのは朝ドラ『エール』がきっかけでした。

『エール』はご存知のように作曲家の古関裕而さんがモデルです。先日、古関さんが『暁に祈る』を作曲した回を観ていたら、その曲をテーマ曲にした国策映画のポスターが画面に映って、なんと監督が佐々木康さんでした。

私の家は田舎で商売をやっていました。両親ともに映画が好きで、土曜日の夜になると近くの名画座に時代劇の3本立てを観に行っていました。おむすびと水筒に入れたお茶を持って、夕食は映画を観ながら食べました。私がまだ3、4歳の頃だと思います。銀幕のスター達の声を子守唄に私はすぐに寝てしまったそうです。時折、足元をネズミが走り抜けたのを覚えています。

父のお気に入りは『雨に唄えば』のようなMGMのミュージカルでした。10代の時に歌手になりたくて上京した人ですから、やはり音楽への憧れは強かったのだと思います。

母の好みは邦画、中でも時代劇が好きでした。その理由が分かったのは私が高校生の時です。私がたまたまテレビで放送していた東映オールスター映画『水戸黄門』を観ていたら、母が「この映画を撮影した佐々木康さんはうちの遠縁なのよ」と教えてくれたのです。

母がまだ女学生の時、一度だけ佐々木監督が家に遊びに来たそうです。母方の祖父母は秋田出身です。祖母は横手高女の寮にいた頃、当時教鞭をとっていた作家の石坂洋次郎とカルタ(百人一首)をやったのが自慢でした。祖父は中央大学法学部の夜間を出て都庁に勤めていました。2人とも実家は裕福な地主だったようです。佐々木監督の家も祖父と同じ沼館町(現雄物川町)の地主だったそうですから、遠縁であってもおかしくはありません。
母はその時佐々木監督から撮影所に誘われたことを嬉しそうに話してくれました。「もし撮影所に行っていたら違う人生だったかもねえ」と夢見るように言ったのを今も覚えています。女学生の時に一度だけですけど、学生演劇の主役を演じたことがあるそうですから、現実とは違う女優になった自分を夢想していたのかもしれません。

今回、この本を読んで佐々木康監督が『リンゴの唄』で有名な『そよかぜ』の監督だったことや、テレビ時代劇の『銭形平次』、『素浪人月影兵庫』も撮っていたことを知りました。どちらも夢中になって観ていた作品です。それから、小津安二郎監督や清水宏監督の助監督時代の話、高峰美恵子さんの恋愛映画を撮っていた松竹時代の話、そして戦後東映に移籍してからの市川右太衛門、片岡千恵蔵と作った時代劇の話。どの話も興味深いものばかりでした。

私が生まれた昭和32年にはなんと10億人以上の人が映画を観たそうです。まさに映画の全盛期です。この本はその時代を支えた早撮りの名人佐々木康監督の自伝です。

↓ 『悔いなしカチンコ人生』



佐々木康の悔いなしカチンコ人生

佐々木康の悔いなしカチンコ人生

  • 作者: 佐々木 康
  • 出版社/メーカー: けやき出版
  • 発売日: 2020/10/08
  • メディア: 単行本



nice!(0)  コメント(0) 
共通テーマ:

この広告は前回の更新から一定期間経過したブログに表示されています。更新すると自動で解除されます。