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眠りの精 [詩]

眠りの精 高平 九

眠りの精というのは
砂漠のどこかにすんでいるそうです
眠りの精は夜になりますと
砂漠の砂のひと粒から
そっと抜け出して
軽くのびをすると
空高く舞いあがります
彼は世界中の子供たちの中に住む
あくびの精が生ずるエネルギーで飛ぶのです
そして夜空一面に眼には見えない
眼にみえない金色の砂をまきます
地上にいる私たちにはこれは星が増えたとしかみえないのです
それから、その砂は
私たちが、その日の楽しいできごとや悲しいできごとを
心の日記にゆっくりと記すのを待ってから
音もなく降りてくると
優しく瞳の奥に忍び込んで
夢の精の描いた美しい物語に
まごころを与えるのです

さて仕事を終えた眠りの精
明日は青い鳥や火の鳥が
この砂漠を訪れてくれるだろうか
今頃幼なじみのアポロンや
けんか友達のトリスメジストは
どうしているだろうか
いつの日にかもう一度
幸せの精の美しい子守歌を
聞けるだろうか
眠りの精はこんなことを考えながら
次の夜が来るのを静かに待っているのでしょう
眠りの精は
砂漠のどこかに
たったひとりですんでいるそうです

                   1972作
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