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詩 密室の道化師 [詩]

密室の道化師    高平 九

戦争は密室で起こっているから
外にいる僕らはみているしかない
いつの間にか僕らの場所が密室になるまで
僕らは戦争が起こったことにも気づかない

蝶々が指先のようになにかをつかもうともがくけれど
つかまるのはカラスの糞にまみれた案山子くらいだ
ああ、案山子ほど口がかたい奴はいない

アリは皆口をあけてつぶやくけど
何をつぶやいているかは互いに知らない
たとえそれが真実の甘い蜜であっても

誰かが老人たちをころす
今日もまた子供を優しい日常から拐ってゆく

道化師はひとり空を見上げ
奥歯をがりりと噛み締めた

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