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『コインランドリーの天使』を観た。 [観劇]

板橋の「サブテレニアン」という小劇場で『コインランドリーの天使』という芝居を観た。大学生の劇団「劇団浅葱組」の第二回公演。作・演出は主宰の山野莉緒さん。

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↓ キャストの皆さん



勝手な感想を少し書いてみる。的外れな点があれば御容赦願いたい。

若い貧乏画家浅沼がコインランドリーで天使に出遭う。画家が「天使」と呟いた途端に暗転してオープニングのダンスシーン(?)洗濯物を投げ合うのが面白い。
それが終わると天使の羽は消えていて、レイと名乗る普通の女性がいるだけ。

作・演出の山野さんは、浅沼とレイのたどたどしいセリフのやり取りを丁寧に書き、演出する。パンフレットの挨拶にもあるが、コインランドリーでの人と人の関係は実にはかなく冷えている。その冷えた関係がほどけていく様子を、2人の短いセリフのやりとり、そして表情と息づかいを使って観客に見せていく。役者の表情がつぶさに見える小劇場ならではの演出だ。

浅沼は柳田という年の離れた男とホテルで関係を持っている。柳田は美大の教授で、浅沼をモデルに使ったり、彼の絵を売る仲介をすることでささやかな生活を支えてやっている。直接金銭の援助はしない、キスはしないという2人の間のルールにも山野さんの人間関係への考えが反映している。人と人との関係は自然に成り立つほど簡単ではない。そこには常にルールが必要であると。

山野さんの作品は徹底的に家族や人間関係にこだわっているのが特徴だ。彼女の鋭い観察眼で見切った人と人との関係を、まるで掌で包み込んで息を吹きかけるように慈しむ。こういう人間関係への疑問と期待はこれからも彼女の作品の大きなモチーフとなるだろう。

物語に話を戻そう。思うように絵を描けなくなっていた浅沼はレイを描きたいと願う。

そのレイの顔を描くシーンにも山野さんのこだわりが見られる。浅沼はレイの目を眉を耳を輪郭を1つ1つ讃えながら描いていく。とても美しいシーンだ。少しく官能的でもある。

初めて満足できる作品をものした浅沼は柳田と別れて独り立ちする決心をする。この別れのシーンもいい。柳田の虚勢が切ない。完成した絵をもう少し観たかった。山野さんは絵心もあると聞いている。どんな絵に仕上がったか気になる。

結末については言及しないことにする。再演もあるかもしれない。でも、最後のドーナッツには笑ったなあ。深刻なシーンをこうやって笑いでぼかすというセンスはなかなかまねできない。勉強になった。

場転の工夫、音楽の使い方なども実に丁寧に作り込んでいる。山野さんをはじめキャスト、スタッフの芝居作りへの真剣な取り組みのたまものだと思う。

今後、夏にまた公演を予定していると聞いている。今から次回作が楽しみだ。
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MMT公演の御案内 [観劇]

さて、今回の公演を見逃した皆さん。2月にもやまさわたけみつ先生とMMTの公演がありますよ。




神奈川県演劇博覧会

MMT PANTOMIME 出演

2/10(土 2時・5時

「タクシードライバー」(MMT)

2/11(日)3時・6時

やまさわたけみつ

会場:神奈川県立青少年センター多目的ホール

入場無料


やまさわ先生のソロも見られるそうです。公演の後で先生にお聞きしたのですが、最近またマルソーの作品を分析して、自作の参考にしているそうです。練習もかなりやっていらっしゃるとか。。70歳になられた先生も、まだまだ勉強なんですね。見習いたいと思います。

テクニックとおふざけだけで、中身のないパフォーマンスに食傷気味の貴方。一度MMTのパントマイムを御覧ください。はまりますよ、きっと。
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『クリスマスキャロル』を観ました。 [観劇]

横浜のあかいくつ劇場でパントマイム劇『クリスマスキャロル』を観ました。



12月9日(土)2時の回です。

やまさわたけみつ先生が主人公スクルージでした。

いつものことですが、パントマイムは開幕後、少し辛抱の時間が必要ですね。

いきなり暗闇に入ると何も見えないように、言葉のない世界では人の心が見えないように感じます。

でも、しばらく暗闇に目を凝らしていると次第に目が慣れて来るように、辛抱して役者の動きに集中すれば、必ず人物の心が見えてきます。

むしろ、言葉によって濁っていた心が透明な驚きを持って観客の心に直接伝わるのです。

舞台で行われていることは、 本当のことではありません。しかしだからこそ、役者には心の芯から言葉を発することが求められます。単なるテクニックだけではなく、心の深いところまで人物の心を再現する能力が必要です。少なくとも私はそういう演技を目指して芝居に取り組んでいるつもりです。実際に出来ているかは別問題(笑)

パントマイムはセリフがない分、嘘がつけません。暗闇に目が慣れてくると、動きが見えることを通り越して、心が透けてみえるようになります。大げさですか?きっと体験した人しかわからないでしょうね。

やまさわ先生とMMTの公演には、私以上にパントマイムに目が慣れた強者が集まります。だから、すごく集中して舞台を観ているのが分かります。舞台と客席の一体感。これを体験できるのも、パントマイムにはまる理由なのかもしれません。
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MAC11&夢桟敷公演『カリホルニアホテル』 [観劇]

11月18日(土)
MACイレブン&夢桟敷さんの『カリホルニアホテル』を観てきました。



西武池袋線の桜台駅から徒歩で5分くらいのところにある定員60名の小さな劇場。開演は13時。

この回は超満員!

まずは妹尾さんの前説。落語『文七元結』への思いなどを聞かせてくださいました。最後には作者の私も紹介いただき恐縮しました。舞台より緊張しましたよ。

拙作を演出の妹尾さんがどう料理してくださるか楽しみにしていましたが、思っていた以上に楽しい芝居になっていました。作品の物足りない部分を補ってくださったので、ずいぶん見やすい内容になっていたと思います。

(ここからは見た人しか分かりません)
特にアレックスを実際に登場させたのがよかったですね。私の作品ではやっと次回作(第3部)に登場します。それに借金取りが夫婦で、旦那が真子の元カレというのも「やられた」って感じでした。
(ここまでは見た人しかわかりません)

キャストの皆さんもそれぞれの持ち味を生かして、見事に演じていました。お客さんの反応も良かったですね。開演前はドキドキしていましたけど、観ているうちに自分の作品であることを忘れて楽しんでいました。いい作品に仕上げていただき、ありがとうございました。

最後は大漁節をキャストが踊り、客席も一緒に歌って盛り上がりました。座・劇列車の最後にもダンスがありますけど、大漁節には思いいたらなかったです。

終演後、キャスト・スタッフの皆さんとお話をさせていただきました。

次は座・劇列車の『カリホルニアホテル』の番です。 MACイレブン&夢桟敷さんから10名もの皆さんが観に来てくださるそうです。 後半月稽古に励みたいと思います。
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パントマイム公演に行きました。 [観劇]

1年ぶりにパントマイムのやまさわたけみつ先生の公演に行きました。マルソー追悼と銘打った小さな舞台でしたが、やまさわ先生を慕う皆さんが集まって濃密な空間を作っていました。

一番前のほぼ真ん中の席で、演じる先生との距離は2メートルもありません。どの演目も何度も観たものばかりですが、思わず先生の動きに見入ってしまいます。2時間があっという間です。

先生の演技は何度観ても何かしら発見があり、以前は見えなかったものが見えるように感じるのは一体なぜなのでしょう。

先生のマイムが70歳を迎えて円熟期に入り、より深化したからでしょうか。

マイムは演技者との距離や、観る角度によっても印象が変わるということもあるのかもしれません。

それに観る側の私が何度も観て、より深く細かく想像できるようになったということなのかもしれません。私が初めて先生の演技を拝見したのが40歳、その後20年の間私もそれなりに様々なことを体験して来たので、見えなかったものが少しは見えるようになったのかもしれません。

以前、先生がおっしゃっていました。
「マルソーは同じ演目を何度も繰り返し演じている。あなた方も自分の演目を愛して、繰り返し演じて深めなさい」と。

先生の作品をはじめて観た人の中には「何をやっているのか全く分からなかった」とアンケートに書く人もいるようです。テレビも本も、学校の授業さえも分かりやすいことが美徳になっています。自分が分からないのは自分の想像力や感受性のせいではなく、すべて表現する側の責任だと考える人が多いのです。

しかし、観る人に少しの想像力と集中力があれば、何もない空間に様々なものが立ち現れるのです。それはアダムとイブを誘惑する蛇かもしれません、キャリアウーマンの同僚だったり、野原いっぱいに飛び交う蝶かもしれないし、バイオリン弾きに寄り添う野良犬かもしれません。それらの人間や動物たち、時には神までが圧倒的な存在感を持って先生の傍らに現れます。

私はパントマイムの真価とは演技者と観客の共同作業によって成り立つ点だと思うのです。ディテールに徹底的にこだわるパントマイミストが演じて、それを観る側が集中力と想像力で読み解く。そういう空間を体験することが「パントマイムを観る」ということなのではないでしょうか。

12/9には横浜の人形の家のホールでMMT(やまさわ先生が主宰する劇団)の公演『クリスマスキャロル』があるそうです。楽しみです。
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