So-net無料ブログ作成

あの日に帰ろう [詩]

あの日に帰ろう    高平 九

あの日に帰りたいな
転勤のための掃除をしながら
同僚が言った。
あの日はいつがいい。
俺が契約を取れなかった前の日なんかどうかな
それとも震災の前かい
それとも、あの人が砂漠で撃たれた日か。
それはどうだろう
戻ったとしても僕たちに何ができる。

じゃああたしが生まれる前は
夕食の席でお前が言った。
それならあたしもやり直せるし
お前がぽつりと言った本心。
でもね
妻が言う
そうだな
父が言う
どんなにうまくいかなくても
お前は今のお前である以上に
美しくも優しくもないはずだから
そう
自慢の娘だから。

夜、ベッドの中で。
君と恋に落ちる前に戻っても
また、もう一度君に出逢えるなら
それもいいな。
ほんとに?
あたしは嫌
とってもつらかったもの
あなたの気持ちが見えなかったり
あなたに捨てられたらって思ったら
生きた心地がしなかった。
それなら、今だって
君を失ったらと思うと。

抱いている女のことより、次に抱く女のことばかり考えていた
二十代か
それとも泥まみれで走りながら
一方で裸の女の妄想を追いかけ
精液をまき散らしていたハイティーンのころか
友情を叫びながら
心のナイフでいつも自分と相手をめった斬りに切り裂いていた
ローティーンのころだだというのか。
ごめんだ
あんなみじめなガキのころに戻るのはまっぴらだ。

なら
やはり子ども時代。
だれもが自分を愛するという幻想に酔い痴れていたあのころ
だれも愛する必要などなく、ただ愛されることに微笑んでいれば
世界が微笑み返してくれる。
光があふれるあのころに戻れるなら
こんなくすんだ運命に背を向けて
帰ってもいいな
あの頃に。

DSC_0068.jpg



nice!(1)  コメント(1)  トラックバック(0) 

nice! 1

コメント 1

辻

紹介

日蓮正宗 http://www.nichirenshoshu.or.jp/

全生庵  http://www.theway.jp/zen/

言霊百神 http://futomani.jp/
by (2015-05-19 23:34) 

コメントを書く

お名前:
URL:
コメント:
画像認証:
下の画像に表示されている文字を入力してください。

※ブログオーナーが承認したコメントのみ表示されます。

トラックバック 0